【2026年4月施行】企業型DCが変わる!マッチング拠出の上限撤廃と簡易型DC廃止を解説

2026年4月1日から施行される企業型DC関連の改正は、主に「①簡易型DCの廃止・通常DCへの統合」「②マッチング拠出の上限撤廃」「③自動移換の説明時期変更」「④中小事業主掛金届出の簡素化」の4項目です。

本記事では、特に加入者・事業主の実務に影響が大きい①と②を中心に解説します。

①簡易型DCの廃止 ― 企業型DCへ一本化

簡易型DCとは

2012年に導入された「簡易型企業型年金(簡易型DC)」は、規約作成の要件を緩和することで中小企業(従業員300人以下)がDCを導入しやすくするための制度でした。

改正後の姿

2026年4月以降、簡易型DCは廃止され、通常の企業型DCに統合されます。統合にあたっては、これまで簡易型DCで認められていた「手続きの簡素化」の要素が通常のDCにも取り込まれます。つまり、小規模事業者でも通常のDCとして手続きを簡素に行えるように、制度設計が見直されます。

改正前 改正後(2026年4月〜)
制度名称 簡易型DC・通常DC(並立) 企業型DC(一本化)
対象事業所規模 簡易型:300人以下 規模問わず同一ルール
規約作成 簡易型は要件緩和あり 中小企業向けの簡素化要素を通常DCへ組み込み

②マッチング拠出の「上限制限」撤廃

現行制度の問題点

企業型DCでは、従業員が事業主の掛金に上乗せして自ら拠出できる「マッチング拠出」制度があります。しかし現行法では、加入者が拠出できる金額は「事業主掛金の額を超えてはならない」という制約がありました。

例えば、事業主掛金が月1万円の場合、従業員はマッチング拠出で月1万円しか上乗せできません。仮に拠出限度額(月5.5万円)まで余裕があっても、その余枠を使い切れない問題がありました。

改正後のルール

2026年4月以降、この「事業主掛金以下」という制限が撤廃されます。加入者は、拠出限度額の枠内であれば、事業主掛金の金額に関わらず自由に上乗せ拠出できるようになります。

項目 改正前 改正後(2026年4月〜)
マッチング拠出の上限 事業主掛金と同額まで 制限なし(拠出限度額の範囲内)
合計の上限 月5.5万円(他制度なしの場合) 月5.5万円(→2026年12月以降は6.2万円へ引き上げ)
iDeCoとの選択 マッチング拠出またはiDeCoのどちらか一方 同左(変更なし)

活用シミュレーション

例えば、事業主掛金が月1万円の会社員の場合を考えます。

  • 改正前:マッチング拠出の上限は月1万円。合計拠出額=月2万円
  • 改正後:上限制限なし。拠出限度額まで上乗せ可。合計拠出額=最大月5.5万円(2026年12月以降は最大6.2万円)

マッチング拠出の掛金は全額所得控除の対象となります。上限撤廃により、会社員でも大幅な節税メリットが得られるようになります。

マッチング拠出 vs iDeCo ― どちらを選ぶべきか

企業型DCがある会社では、マッチング拠出かiDeCoのどちらか一方しか選べません(規約で認められている場合に限る)。2026年4月の改正後は、マッチング拠出の枠が大幅に広がるため、iDeCoより有利になるケースが増えます。自社のDC規約の拠出限度額と事業主掛金の水準を確認した上で判断しましょう。

③自動移換の説明時期変更

企業型DCに加入したまま退職・転職すると、6ヶ月以内に手続きをしないと「自動移換」(現金化されて国民年金基金連合会に移管)されてしまいます。現行法では、事業主が退職者にDC移換手続きを説明する義務は「資格喪失時(退職後)」でした。

2026年4月以降は、「資格喪失が見込まれるとき(退職前)」に前倒しされます。退職前に適切な説明を受けることで、自動移換による不利益を防ぐことが期待されます。

④中小事業主掛金届出の簡素化

iDeCoに加えて中小事業主が掛金を拠出できる「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)」では、現行の届出先が「厚生労働省」と「国民年金基金連合会(国基連)」の二重になっていました。2026年4月以降は国基連への届出のみに一元化され、事務負担が軽減されます。

補足:簡易型DCの普及実態

※ 実務上の観点からの補足

簡易型DCは2012年に中小企業のDC普及促進を目的として創設されましたが、実際にはほとんど導入事例が存在しなかったとみられています。

その背景として以下の点が指摘されています。

  • 手続きを簡素化したとはいえ、DC導入には運営管理機関の選定・規約作成・従業員教育など相応のコストと労力が必要で、小規模事業者にとっては依然として高いハードルがあった
  • 同じ中小企業向けのDC類似制度として「中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)」が2018年に創設されており、そちらの方が手続きが格段に簡便であった
  • 規約型の企業年金制度全般として、総合型厚生年金基金の解散などもあり、中小企業における企業年金離れが進んでいた

こうした経緯から、今回の「簡易型DCを通常DCに統合する」という改正は、制度の整理・簡素化という意味合いが強く、実態への影響は限定的と考えられます。むしろ今後の企業型DC拡大に向けた制度の「地ならし」として位置づけられるものです。

関係法令・参考資料

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です